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2009年10月27日
鳩山首相の所信表明演説の見どころ
10月26日に行われた鳩山首相の衆参本会議での所信表明演説。すでにさまざまな報道がなされていますが、私なりにそのメッセージ性についてまとめておきます。
本格的なパブリックスピーチとして、良い研究材料です。
■鳩山首相の所信表明演説の概要
・過去10年で最も長い所信表明演説 約1万2900字、全52分。
・小泉首相26分、麻生首相21分 安倍首相34分(?)に比べてはるかに長い
・「国民」という単語が47回出た
・NHK放送(衆議院)が14時からの52分間。私は生で全部見たけど、平日昼間に多くの人は見れない。しかも長いので52分間の演説を全部は見ない→興味のある人も、ほとんどはニュースか新聞で見る
こういうものでした。
■見どころ
○「曖昧、現実論に踏み込め」「具体的ではない」と言うけれど・・・
これ、所信表明演説クラスの大方針の発表だと、結構何をどう言っても言われます。企業の経営方針説明会でも言われますからね。また、具体的にすればもっと時間が延びます。こういう時に効果的な工夫は、具体例を1つ2つ挙げ、判断軸、優先順位の付け方を明確にすることです。そういう意味では、具体的なキーワードが出ていたので、最低限のレベルはクリアされているのではないかと。
◎実は時間の長さの割に、シンプルな構成
ほとんどの人は52分間の映像ではなく、ダイジェストで見ます。詳しく知りたい人は活字で見ます。そこで大事なのは「見出し」です。今回の所信表明演説は、実は構成がシンプルだった。それが良かった。
1.はじめに
2.いのちを守り、国民生活を第一とした政治
3.「居場所と出番」のある社会、「支え合って生きていく日本」
4.人間のための経済へ
5.「架け橋」としての日本
6.むすび
6章立てです。つまり、「方針」としては「はじめに」と「むすび」を除く4つだけなんです。ポイント4つ。この見出しの数が大事です。少ない方が伝わりやすい。
ちなみに、麻生首相(2008年9月の所信表明演説)「1.就任に当たって 2.国会運営 3.着実な経済成長 4.暮らしの安心 5.簡素にして温かい政府 6.地域の再生 7.持続可能な環境 8.誇りと活力ある外交・国際貢献 9.おわりに」の9章立て。
福田首相(2007年10月の所信表明演説)「1.はじめに 2.国会運営について3.政治と行政に対する信頼の回復 4.信頼できる社会保障制度の整備 5.国民の安全・安心を重視する政治への転換 6.子育てを支える社会の実現 7.改革の継続と安定した成長 8.いわゆる格差問題への対応 9.これからの環境を考えた社会への転換 10.平和を生み出す外交 11.むすび ― 自立と共生の社会に向けて」の11章立て。
安倍首相(2006年9月の所信表明演説)「1.はじめに 2.活力に満ちたオープンな経済社会の構築 3.財政再建と行政改革の断行 4.健全で安心できる社会の実現 5.教育再生 6.主張する外交への転換 7.むすび 」の7章立て。
ね。項目数がどれよりも少ない。活字にすると、むしろ構成は分かりやすいんです。
また、今回の鳩山首相の所信表明演説について、「長い」と文句を言う人は多かったけど、時間が従来の2倍なら、「政権交代」の大きな意味を伝えるには、むしろ適切ではなかったか、とも思います。
いつも程度の長さだと「変化が感じられない」と言われるし(のりピー報道と争う日の演説ですし)、でも、今回の以上の長さになると、テレビの編成や分析、解説する人が大変になる。そういう意味でも、影響のある人たちへの配慮も感じられる「友愛」演説だと思います。
×見出しのメッセージが分かりにくい
ところが、せっかくシンプルな構成にしているのに、見出しだけ見ても分かりにくいんです。
2.いのちを守り、国民生活を第一とした政治
3.「居場所と出番」のある社会、「支え合って生きていく日本」
4.人間のための経済へ
5.「架け橋」としての日本
ねえ。この見出しの付け方、キャッチコピーは、改善の余地があります。
わかりにくいこと+総論的にあまり反対意見が出そうにないものばかりになっていることが、問題です。△△ではなく○○、という具合に何を変えるのかを明確にしてほしい。分かりやすさの工夫としては、たとえばどんな助成金や補助金が生まれそうなのかをイメージできるものにする。
△大切なことは繰り返す:「国民」47回出た
国民が主役。国民を大事にしたいんだ、という気持ちは分かりました。
でも、国民が主役なら、主役は責任重大ですよね。政府としては、国民に何を求めるんでしょう、どんな役割を期待するんでしょう。どういう参画を望んでいるんでしょう。「面白かったらクリックしてね」とか、反応のヒントがほしいところです。だって、主役ですもんね。準備や対策が必要ですよね、国民にも。
○締めの言葉大事。ここは高い確率でテレビに編集なくそのまま出る。
「ぜひとも一緒に、新しい日本をつくっていこうではありませんか!」
血色良く、力強く訴えられ、また多くの局で放送されたので、良かったですね
△「全体の印象」
演説直後のテレビ解説は、時間がなくて分析をほとんどしません。もう見たまま、思ったまま言って終わりです。「長い」とか、そんな付加価値のない一言で終わる。こんなのは気にしなくていいんです。
注目したいのは、当日夜と翌朝のニュースでの解説です。ここで何をどう言ってもらいたいかを考えてまとめる。それが大事ですよね。
ニュースでの解説は、中身の要点をいくつか箇条書きに説明して、あとは全体の印象を2つ3つしか言わないし、言えません。そこで何を言ってもらうかがキーです。
夜のニュースでは、要約すると「あいまいだった」という一言に集約できます。
ここで、鳩山さんは本当は何て言ってほしかったんだろう。
何と言ってもらうことを狙ったんだろう。
それが分からなかった。
たぶん、「言いたいこと」を「言う」ので精いっぱいで、ニュース番組の解説でどう「コメントしてもらう」のかという発想はなかったんじゃないですかね。
-----翌朝の報道を見て追記:
「今までとは違う国になりそうだ、協力したら面白い、自分たちも参加するんだ、そういう気持ちに皆さんがなったらうれしい」。首相は本会議終了後、首相官邸で記者団にこう語った。(日経新聞10/27/09朝刊)
だそうです。各社の報道ぶりを見る限り、首相が期待するような、「いざ新しい国へ」的な解説でまとめているものは見当たりませんでした。残念。------
オマケ:黄色/ゴールドのネクタイ。赤と並んでPRの世界では「パワータイ」と呼ばれる色。赤は「力強さ」、黄/ゴールドは「親しみ」を伝える色とされます。鳩山さんはこの黄色/ゴールドがお好きのようで、すっかり見なれましたが、これは友愛を印象付ける色で良いと思います。
でも、できればTPOに合わせて雰囲気をちょっと変えてほしいです。ワンパターンと思われるとファッションチェックとしてのネタ出しを失うことになりますから。番記者にはちゃんと記事になるネタを出し続けないと、変なネタを見つけて書かれますからね。
・・・でもね、そうは言っても、気合いの入った所信表明演説で、聞いていてたいへん興味深かったです。従来ともかなりスタイルが違いましたしね。
今日も1つ、自己演出コミュニケーションの勉強ができました!
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投稿者 MT : 2009年10月27日 01:09