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2006年07月28日
[つるの式43] 「慣れですね」は注意の言葉
セミナーやトレーニングで、スキルアップのポイントを説明しているとき、
「あ、あっ、つまり慣れですね」と言う人がいます。
何度も繰り返せば、慣れてできるようになりますね、という意味で本人は言っているようです。
「慣れですね」
「そうですね、慣れですよ」
本人はそう言ってもらいたいと思っている。
あなたの周りにも、そんな人、いませんか?
ところが私はこの言葉を聞くと、「要注意」のアラームが頭の中で鳴り始めます。
どうしてか。
それは、「つまり慣れですね」という人は、スキルアップに必要なポイントを理解する前に、「何度も繰り返せば良い」「そうすればうまくなる」と思い込もうとしているからです。
こちらが伝えようとしているポイントの1つ1つをきちんとキャッチできてないんです。
もっと分かりやすく言うと、
「うまくなりたい」⇒「大切なポイントを1つ1つ学ぶ」⇒「繰り返す」⇒「うまくなる」
というプロセスを
「うまくなりたい」⇒「繰り返す」⇒「うまくなる」
という具合に重要なプロセスを1つ、はしょって理解しかけています。
これ、ちょっとした違いのようですが、しばらく見ていると、スキルアップのスピードに大きな差がでます。
なぜか。
先に理由を言いましょう。
それは、 「つまり慣れですね」という人は、無意識のうちに「自習の道」を選んでいるのです。
ここで言う「自習」とは、体験の中で、自分で、「つまり、こういうことなのかもしれないな」と理解していくことです。
もちろん、それは決して間違いではありません。
体験から学ぶ。大切なことです。
でも、せっかく、セミナーやトレーニングに参加し、気持ちは、「いま、この場で効率よく学ぶぞ!」と思っているのに、「慣れですね!」と言った瞬間に、そのセミナーやトレーニングで教えてもらえる、「効率よくスキルアップできるポイント」を自分で受け入れなくなっているわけです。
大切なポイントを目の前にいる人が教えてくれているのに、それを聞かないで(本人は意識していませんが)、
「もういいです、自分でやってみて考えます」
と宣言しているようなものなんですね。
でも、「慣れですね」という人の気持ち、とてもよく理解できます。
私もよく言ってましたから。
大学時代、私はプロのミュージシャンになろうとしていたことがあります。
その少し前の高校時代、吹奏楽でサックスを吹いていました。
この時、教えてくれる先輩がいませんでした。
それで、一人でとにかく練習を続けていました。
ほぼ100%、「自習」です。我流とも言いますね。
後輩に「教えてください」と言われると、
「こんなんは、慣れやで」と答えてました。(教え方が分からなかったので・・・まったくひどい先輩です)
楽なんですよね、そう言う方が。
大学で、プロのミュージシャンにラテンパーカッションを習いました。
楽器の種類は違いましたが、高校3年間で自分が到達したレベルは、おそらくプロについて半年間で越えていたと思います。
この時、私は、「少しでも短期間にプロのレベルに技術を高めたい」と強く思っていました。
そのため、自分の師匠の教えてくれることを1つでも多く、短期間に吸収しようとしました。「慣れ」で到達できるレベルやそれにかかる時間は高校の時に知ってますからね。
しっかり教えてくれるプロがいたら、「慣れ」に頼るのは明らかに非効率なんです。
私の師匠は、「まず4分音符、毎日30分練習して」と言いました。
2週間くらい経つと、
「今度は、その4分音符、8分音符を意識して練習して」と言いました。
(同じ4分音符でも演奏した時の印象が変わります)
そしてまたしばらくして、
「今度は、その4分音符、3連符を意識して」
そしてまたしばらくして、
「今度は、その4分音符、16分音符を意識して」
2、3ヵ月の間、メトロノームを前にひたすらこんな練習が続きます。
それでも半年経つと、「えっ、まったくの素人が半年でここまで!?」
と20年我流でやってきた人にも言われるようになりました。
もちろん私自身、4分音符の演奏の仕方に差があるなんて、高校で3年間やっていても気づきませんでした。そういう「プロから見て大切なポイント」を知っているかどうかが、ある時以降、技術レベルの向上を一気に加速させるかどうかを決めるんです。
「できること」と「教えられること」は確かに違いますが、「できる人」で少しでもポイントを「言語化できる人」と会ったら、ぜひ「何から練習したらいいですか?」って聞いてみてください。
人から教えてもらって「身につける」ことが得意になると、自分の成長を感じやすくなり、学ぶことがどんどん面白くなります。
もっと面白いのは、自分を手助けしてくれる人がどんどん増えて人間関係がよくなることです。
だって、「教えてください」って言って、近づいてきたら、誰だって「仕方ないなあ」なんて言いながらも、悪い気はしませんから。
そうなったらね、いいですよ、
いろんな力をもった人が、専門的な知識や技術を教えてくれますから。
しかも相手は喜んでいる。当然、自分もです。
これをつるの式コミュニケーション・メソッドでは、
「学び上手は関係上手の法則」と呼びます。
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まとめ: つるの式(43)学び上手は関係上手の法則
・ 「つまり慣れですね」を言いそうになったら要注意
・ 自分の体験からよりも目の前の人から学べないか考えよう
・ 人から吸収できれば、成長は一気に加速する
・ 「教えてください」がマジックキーワードだ
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投稿者 鶴野充茂 : 2006年07月28日 11:27
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