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2005年09月26日
[つるの式35]年齢以外の判断軸
人と話をしていて、つい相手の年齢を聞いてしまう癖がある人は、ちょっと工夫するだけで、他人の良いところを自分のものにしてしまえるような気がします。
初対面やまだ関係が強くない間柄で、相手の年齢を聞く人っていますよね。実は私、相当長い間、そういう人が苦手でした。
年齢を聞いてくる相手は、10中8、9、こちらよりも年上で、相手もそれをなんとなく分かっていて、相手の年齢を確認することで対等な会話の関係を崩そうと考えているように感じることが多かったからです。
さらに、こちらの方が年下だと知るやいなや、「若いのにしっかりしてる」とか、「私なんてもういい年だから」と全ての理由を年のせいにします。
初めてこんな違和感を感じたのは、私がまだ学生の頃だったと思いますが、「もういい年」なんて言う人は、きっと昔からずっと「もういい年」だと思っているんだろうと強く感じていたのをよく覚えています。
ところがある時、人が年齢を聞く理由がなんとなく分かってから、この違和感は自然と消えました。
●年齢は判断軸
それは、こういうことです。
人は相手をよりよく理解するために、自分の中にある評価・判断軸で相手のポジションを把握しようとします。その時に年齢を聞くのは、相手にとって「この年齢ではこんな段階」という判断軸ができていることを示します。
少なくともこの時、相手のことに興味がなければ、年齢は聞きません。相手のことをもっと的確に理解したくなった時に、自分が頼りにしている「年齢」という判断軸を使って相手を把握するわけですね。
一方で、私には年齢で相手を理解する、という判断軸がありません。国内外問わず、年齢で把握できないくらい極端な人とたくさん出会ってきたためか、年齢別の平均像が自分の中にないのです。だから自分がよく分からない評価軸に当てはめられることに違和感を覚えていたのかもしれません。
さて、年齢を聞く人は、おそらく同級生や同期といった限られた年齢層の人との付き合いが長く、何かとその中で比較したり、されたりすることが多かった人なのだと思います。(同じように、役職を聞く人は、上下関係のはっきりした組織に長くいる人ですよね)
こういう人は、少しでも年齢別の平均像と違った人と出会うと、頭の中の認知システムが混乱し、「え、この人、一体何歳?」という疑問が口をついて出てしまいます。
日本の場合、生まれた時(乳幼児の子育て情報なんかは特に)から「○歳(○カ月)時点ではこんな感じ」という平均値があまりにも広く普及しており、学校では異なる年齢の人と机を並べる機会が少なく、大学頃までの経験はそれほど差がない(と認識されている)ため、無意識のうちに「年齢」と自分を基準とした「年齢差」で人を判断してしまうことが多いのですが、実はこれ、結構危険なことなんですよね。
と、いうのも、「○歳だから~できる/する」という情報は、単なる統計的平均値なのにも関わらず、それを(参考ではなく)基準として捉え、常に比較の対象としていると、それに当てはまらなければ不安になるからです。
そうすると、気になるところは平均値から劣っているところですから、ついつい減点法で判断して自分自身に自信が持てなくなりがちです。変な占いで不安になるのとよく似ています。
●年齢を聞きたくなる時はチャンス
こんなわけで、相手の年齢がどうであれ、知らず知らずのうちに自分がうまくいかない理由を繰り返し自分の年齢のせいにして唱える人が多くなるのかもしれません。
ただ、見た目が実年齢とかけ離れている場合は別として、喋り方や受け答えの内容が自分の知っているその年齢の平均像から差があると気づいた場合は、実はその気づいた人にとって、チャンスでもあります。
その時、自分の中に新しい判断軸ができあがる可能性があるからです。
多くの場合、まず相手が自分よりも年下であることにほぼ確信がある時に年齢を聞きます。
そして、心の中で、相手と自分を比較します。
あれ、自分が彼/彼女くらいの時って、こんな感じだっけ?
あれ、彼/彼女は自分よりも若いはずなのに、どうしてこんなに立派なの?
あれ、ひょっとして自分って、こういうところで彼/彼女に負けてる?
で、年齢を聞いた後、「(私よりも)若いから積極的、元気なのね」とか「偉そうなこと言っていても○歳だから、このあたりまでだろう」なんて感じで、やっぱり年齢を軸に結論付けてしまうのです。
そもそも、もし、年齢の軸で「あれっ」と思ったから、相手に年齢を聞いたのだとしたら、それは年齢という軸だけでは判断できない例を見つけたわけですよね。こういう時の結論は、年齢で納得せずに、なぜ自分が驚いたのかを考えるようにします。
それは、自分が持っていない何かをその相手が持っている証拠でもあるわけです。そして自分はそれに興味がある。
だからその相手が何に優れているのか、どうしてそんな発想をしたのかをという視点を学んでみて損はありません。
で、それには、まず驚いて相手を褒めることです。
褒めることは認めることでもあります。
相手を認めれば、相手のいいところが自分の中にも取り入れられます。
そして、自分のことを認めていないと相手を認めることができませんから、相手を褒めることは、実は自分自身に自信を持つきっかけにもなります。
せっかく沸き起こった自分の好奇心を、「年齢」という単一の判断軸に収めこむのはもったいないことです。
一般的に好奇心は、年をとるにしたがってなくなってきます。判断軸が少なければ、それは視点が少ないということですから、余計に新しいことに気づきにくくなります。
でも、できればいつまでも毎日わくわく、楽しいことを見つけながら生きたいですよね。だとしたら、ぜひ「あれっ」と思ったことを年齢という単一の軸で片付けないでください。
それだけで、世の中のケッタイな人たちをたくさん見つけることができ、人間関係をもっと楽しめるようになるはずです。
これをつるの式コミュニケーション・メソッドでは、
「年齢軸からの脱却の法則」と呼びます。
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まとめ: つるの式(35)年齢軸からの脱却の法則
・年齢をよく聞く人は、無意識のうちに年齢で人を判断している
・年齢軸で判断できない人に出会っても年齢で結論づける危険な癖がある
・まず相手に年齢を聞きたくなったら、驚いて相手を褒めよう
・相手を認めれば、新しい判断軸が手に入れられる
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投稿者 鶴野充茂 : 2005年09月26日 10:28
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