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2007年10月29日
にわかに信じ難いメッセージを伝える時
コミュニケーションの1つの難しさは、メッセージの受け手が第三者に伝達するかどうかを判断する時に、
「それが本当かどうか」よりも、
「本当っぽいかどうか」というのを重視する、というのがあります。
そんなことを、 新潟日報の記事を読んでいて(なぜ?という問いは置いておいて)、思いました。
県警、夜間ライト上向きPR
「夜間のライトは上向きが基本」―。県警は11月末まで展開する高齢者交通事故防止運動で、車のライト上向き走行とこまめなライトの切り替えを重点項目として呼び掛けている。横断中の歩行者を早く発見してもらうのが狙いだが、下向き走行が基本だと思っているドライバーが多く、「ほかの車にまぶしくて迷惑では?」などと戸惑う声が上がっている。
道路交通法で夜間走行の際のライトは、「ほかの車両などの交通を妨げるおそれのあるとき」以外は原則的に上向き。だが県警がこれまで目立ったPRをしてこなかったことや、対向車にまぶしいという意識がドライバーにあり、ほとんど浸透してこなかった。
県警がライト上向きを強調し始めたきっかけは、2005年9―11月に実施した調査。夜間に歩行者が死亡した事故16件のうち、事故を起こした車はすべてライトを下向きで走っていたことなどから、対策に乗り出した。
しかしドライバーの認知度はまだ低く、上向きを呼び掛ける道路上の電光掲示板や県警のホームページを見た人から、「間違いじゃないか」といった問い合わせが月に数件、県警本部に寄せられるという。「走行中に切り替える余裕がない」といった声もあった。
新潟市江南区の女性販売員(23)は「下向きが基本だと思っていた」。同区の男性会社員(38)も「迷惑になるから使わない方がいいと思っていた。教習所でそう習ったかなあ」と首をかしげる。
県警交通企画課は、「いまひとつ浸透していないので、事故防止のため積極的にPRしていきたい」としている。(以上、10/27/07付 新潟日報より引用)
何度も読み直したんです。この記事。
おそらく、ドライバーの過半数は、「えっ?」と思っているのではないか。そう思って検索してみたら、こんな調査が。
車のライト「下向き」が浸透 (Yahoo!ニュース意識調査)
もとは、茨城県発で同じようなニュースが出て、そこからあちこちに広がりを見せているようです。
茨城県の情報は見つけられませんでしたが、青森県警、山口県警、でも似たようなキャンペーンをやっていたようですね。
ま、これが法律に定められているのかどうか、あるいは田舎だけの話なのでは?
という話はあるかと思いますが、
私が興味を持ったのは、「えっ、本当なの?」と思った人が、その後、どのようにメッセージ伝達をするのか、
どのように伝達するようなコミュニケーションの仕掛けを、発信者としては、考えるのか、ということです。
正しいかどうか、ではなくて、
・「えっ」と思った人にそのメッセージを浸透させる
・そのメッセージの周知徹底を図るべく、さらに広い範囲に伝えていく
という話、ですね。
いや、世の中って、本当なのかどうかよく分からない、という話、たくさんありますよね。
私の記憶で言うと、
祖母が住んでいた家(大阪市内)に掘りごたつがあって、私がまだ小学生くらいだったころに、叔母から、
「この下に、大阪城までつながってるトンネルがあるんや」
と言われて、「えっ」と思いつつ、
「何のために誰が掘ったんやろう」とか
「大阪城の人がここからいきなり出てきたらどうしたらええんやろう」などと
真面目に考えていた記憶があります。
それで、あまりにいろんなことを考えた挙句に口から出てきた質問は、
「それ、まだ使えるん?」
叔母は声をあげて笑っていたのを覚えています。
つい先日も、
子どもを連れて、あるサファリパークに行く時に、「あそこは、確かカバに乗れるらしいな」と母が言い、
「象はあっても、カバは無理やろ~」と言いながら、
「いや、でも、もう21世紀だし、サファリパークも生き残り競争で、カバに客を乗せるようなアトラクションを考えても不思議ではない」などと考えていました。
ただ、こういうどこかで聞いた「えっ!」という話は、ヨソではしませんよね。
一応、裏は取りたい、と思うはずです。
こういう時に重要なことは、
・「この話がウソだと思う人はこちらに」という参照情報をつけておく
・「えっ」と思う人はメッセージ伝達者としては期待しないで、反応の良さそうなターゲット層だけにフォーカスする
という感じでしょうか。
前者が公共情報のような広く一般に伝達を図りたいメッセージの場合、
後者が企業のマーケティングのような、特定層だけでもしっかり浸透させたい場合に
よく取られているアプローチですね。
本当っぽくしてメッセージの伝達を促進する、という観点では、こんな工夫を見つけました。
小さいので読みにくいかもしれませんが、
熊野古道の魅力を首都圏でPRするセミナーが26日、横浜市保土ケ谷区で開かれた。和歌山県世界遺産センターの速水盛康主任が、後鳥羽上皇にふんして講演。約50人が聴講し、熊野への関心を高めた。 (以上、10/28/07付 紀伊民報より引用)
いいですか、「後鳥羽上皇にふんして講演」ですよ。
こうすれば、メッセージの伝達力って上がりそうに思いません?
「この前な、後鳥羽上皇に話聞いてきたんやで」
いや、これは強力だと思いますね。
今日も1つ、自己演出コミュニケーションの勉強ができました!
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投稿者 鶴野充茂 : 2007年10月29日 14:26