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2009年11月03日

業界交流会を継続するコツ:メデコミ会9年を振り返って

メディア&コミュニケーション研究会(メデコミ会)という活動を、2000年から続けてきました。広報や広告、メディアといった「伝える」ことをテーマにした仕事に携わる人たちのための同業種コミュニティです。10年近く、毎月毎月、交流会を開催し、平均50人程度、多い時には70-80人くらいの人たちが参加しています。

このたび、毎月その交流会の会場として利用していたお店が、年内いっぱいで使えなくなることが分かり、節目のタイミングでもあるので、これまで参加者の方々からよく質問されていたことを、主宰者としての私の考え方とともにまとめておこうと思います。あんまりこういうの発したことがなかったのですが、いろんなコミュニティを始めようとされている方がいらっしゃるので、何かの参考になれば幸いです。

※なお、年明け以降のメデコミ会の会場や参加条件などは現在検討中です。決まり次第、お知らせします。

 

●メデコミ会の参加者によく聞かれる質問

1.どうやって人を集めてるんですか? 

仕事でイベントをされる方も多いことから、最も多く受ける質問の1つがこれです。毎回、開催日の1週間ほど前に、リマインダのメールを2-3度、配信しています。mixiやGREE上でコミュニティ作って掲示板に書いたりしたこともありましたが、手作業がたいへんできちんとケアすることができなくなってしまい、今ではメールでメデコミ会のMLとメルマガのお知らせのみ。 主催者側の告知活動は基本的にそれだけです。あとは、もう参加者同士で連絡しあったり、初めての方を誘ったりして一緒に来られています。

異業種交流会を主催している方がよく様子をのぞきにメデコミ会にやって来るのですが、この質問をされる方は、できるだけたくさんの人を集めようという発想が強いようです。でも、私はそういうことをほとんど考えてないんです。集めようとするんじゃなくて、自然に集まってくる「場」を作りたい、しかも、みんなが知りあいたいと思うような面白い人たちが集まる場を、という気持ちの方が強いんですよね。

それは、きっと自分が10年前にそんな場を探して見つからなかったからです。当時の私は、業界の最先端の情報が、どこに行けば手に入るのか分からなかった。誰がキーパーソンで誰がどんなことを得意とし、どんな取り組みをしているのか、みんなが今何に注目しているのか、次のトレンドが何なのか、業界の求人や求職のためにはどこにいけばいいのか、といったことを知りたかったけれども見つけられなかったんです。それで、いろいろ調べた揚句に、そんな都合のいい場はどうも存在しないんだと気づき、「ないのなら、自分で作るか」と始めたのが、メデコミ会なんです。

そういう発想でスタートした会なので、参加者が多いかどうかはあまり重要でない。それよりも、どんな人が行きたいと思うかの方が大事なんですよね。だから、私の場合はまず、どんな人に来てほしいのかを考えて、そんな人たちに喜んでもらえる「価値」がいったい何なのかということを繰り返し考えてきました。

そして、その上で大切にしてきたことは、「人が最高のコンテンツである」という信念のもとに、参加者一人ひとりに主役になってもらうにはどうしたらいいか、を考え続けることでした。誰でも初めての場に行ったら緊張しますよね。初めて行く時は、心理的に大きなエネルギーが必要なんです。ところが、ほとんどの「初体験」というのは、その期待ほど大した経験は得られないんです。それが、「ああ、行って良かった」「また行こう」と思ってもらうには、やはり工夫がいります。もちろん物理的に限界もあるのですが、私はできるだけ一人ひとりと、少しずつでも話をして、相手が求めていることを知ろうとし、提供できるものは提供しようと努めてきました。

そう考えてみると、よく話をした人の方が頻繁に、あるいは、長期にわたって参加されているように思います。

といっても、私の記憶力が特に優れているわけでもなく、何度も来てくれている人にも「初めまして」なんてよく言ってしまうし、またせっかく相談していただいても必ずしも適切な答えを返せないことも多々あり、なんだアイツと思われることもあったと思いますが。

 

2.長く続ける秘訣を教えてください

長く続けられる仕組みを作る、ということに尽きますね。

コミュニティが続かない理由は、1)参加者が集まらない、こなくなる 2)主催者が飽きる、まとめる人がいなくなる 3)運営に手間がかかりすぎる といったことがあります。 順に見ていきましょう。

1)「参加者が集まらない、こなくなる」は、会をつくる初期の設計段階の問題。あるいは、運営している時に、場を丁寧にケアしていないと起こります。 

2)「主催者が飽きる、まとめる人がいなくなる」は、短期的には運営グループの役割分担や目的の共有などが重要ですね。 長期的には後継者問題です。会を継続して運営するには、次の時代に中心的な役割を担ってくれる人をどう育てるか。これはどこの組織も同じですね。最近の大学(全学部規模)などの同窓会に行っても、レギュラー参加しているのは、シニアな人がほとんどです。メデコミ会はまだ10年ほどのコミュニティなので、この問題とはまだ真正面からは向き合っていませんが、逃げられない問題ではあります。違世代のつながりって、意識して大事にしないと急にはどうすることもできませんよね。 

3)「運営に手間がかかりすぎる」は、意外と見過ごされやすいポイントです。「最大限の努力をして喜んでもらう」ではなく、「最低限の労力で長く楽しんでもらう」ことを私は重視してきました。誰でも始めるときは一生懸命になるのですが、始めるよりも続ける方が大変なので、どうやって始めるか、と共に、どうやって続けるか、 も考えておく必要があります。たとえば、かなりの数の参加者がいないと会が成り立たない、ということが開催の条件になってしまうと、いつも時間と手間をかけて参加者を集めることになります。これでは続けるハードルが高くなります。

3.この会をやっていてビジネス上のメリットはありますか?

「この会やってて、どうやって儲けてるんですか?」とストレートに聞いてくる方もいらっしゃいます。これ実は、一言ではなかなか答えられない質問です。確かにこれまでは参加費もとらず、飲み物もキャッシュオンデリバリーでやってきましたので、ビジネス視点で考えると、そんな疑問が出ても不思議ではないですね。そして、きっと商売につなげようという会なら、きっと違うやり方をしているとも思います。そういう意味では、ビジネス上の直接、金銭的なメリットはほとんどありません。

ただ、毎月何十人もの新しい人たちと予期せぬ(ほとんどの場合、相手もです)形で会い、その人たちの仕事の話を聞いているだけで、時代の変化はリアルに感じられますし、仕事のヒントも刺激もたくさん得られます。

仕事の話は人が運んでくるわけですから、他では聞けない貴重な情報も多々あります。参加する人たちを見てその人たちの所属する会社の雰囲気もよく分かります。参加者の所属する会社が上場企業なら株価の推移をチェックすることもよくありますが、社員の元気さと株価の動きは高い相関があるように感じています。また、感度のいい人、活動的な人たちは、またそんな人たちとのネットワークも持っています。

そんな出会いやつながりは、目に見えるわけではありませんが、私にとっては貴重な財産だと思いますね。

 

4.どんな人が参加されていますか?

職種で言うと、広報・広告宣伝・メディア・マーケティング関連の人が中心ですが、10年近く、毎月毎月開催していることもあり、参加者の顔ぶれは多彩です。業種になると、製造業から金融まで幅広い事業会社、PR会社や広告代理店、新聞社や放送局、デザイン制作系にネット系、コンサルティング会社に中央官庁、規模は大手からフリーランスまで。会うたびに転職して違う組織の名刺を出される方もいますので、何度も参加される方は所属組織よりも専門テーマや得意領域の方が強く記憶に残っています。年齢層も下は大学生くらいから、上は現役を引退するかしないかぐらいのシニアな方までいらっしゃいます。

人はよく似たタイプの人とつながっているもので、良い関係を築けた人は、その後、似たタイプの人と一緒に来てくれるようになります。ビジネス書の著者は同じような分野の著者と一緒にやってきますし、俳優をしている人も同じ舞台に出ている人と参加してくれます。実はそこで共通の知り合いだということが分かったり、メデコミ会の別の参加者と知り合いだったり、仕事上は競合他社なのに妙に仲良くなっていたり、新しい関係に発展しているケースも多々あります。

仕事を探している人、人を探している人も参加されます。たとえば2-3年ごとに、転職を考えるタイミングごとに参加される方もいらっしゃいます。実際にメデコミ会での出会いから、その後、採用につながったケースが数多くありますし、「この場で出会ったんです」と採用した人とされた人が一緒に報告に来られるケースもよくあります。

強引な売り込みとかされませんか? という質問がたまにありますが、同じような仕事をしている人たちが集まっている場ということもあり、問題は特に聞こえてきません。もっとも、「コミュニケーション」を仕事にしている人たちが集まる場ですので、皆さんそれぞれでうまく対処されていることも大きいかもしれませんが。

また、面白いことに、セールス志向の強い方は、あまり何度も参加しないんですよね。1回様子を見て、来なくなってしまうんです。

5.どうやって始めたんですか? コミュニティの立ち上げ方にコツはありますか?

これから何かの会を立ち上げようとしている方は、よくこの質問をされます。メデコミ会は、2000年7月に、知り合い15人に声をかけて恵比寿のビアホールで、「カンパーイ」することから始めました。そのうち、一人ひとり個別に声をかけて出席者管理をするのも、日を決めるのも、会場と調整をするのも大変になったので、決まった店で、毎月第一月曜日と日を決めて、勝手に集まれるようにしました。 一人で立ち上げるか、グループで立ち上げるかはそれぞれですが、継続して開催する場を考えているなら、開催したりしなかったりではなく、安定的に開催し続けられる体制にした方がいいですね。

あと、交流会で初めての人や話ができずにいる人をケアするのは、運営者としては基本的なことだと思います。でもこれ、人数が急に増えると、途端にできなくなります。なので私は、参加人数が少しずつ増えてきた段階でも、あえて広い会場に移ろうと思いませんでした。拡大志向が強ければ、コアメンバーを増やしてそれぞれがケアしていく、というやり方ができると思いますが、対象者の人口自体がそんなに多くないと思ったんです。広告と広報、マーケティング関連で、首都圏在住、20-40代中心と考えて、1万人くらいじゃないのかな、と。すると、必死に集めて1%が来たとしても100人。毎月開催するとしたら、おそらくそれくらいが上限だと考えました。

で、50人くらいだったら無理しなくても割と現実的だな、と。また、その半分くらいが初参加と考え、その初参加のうちの2-3割が、一人で来ていて、しんどい思いをしていたとしても、それくらいだったら声をかけてあげられそうだ、と思ったんです。また仲のいい常連さんたちコアなメンバーでサポートできそうだ、と。

100人になったら、おそらく全員と喋るのはもちろん、目を合わすのさえも難しくなります。そうなると、ひとりでほっとかれる人が出てくる。これはちょっと申し訳ない。だから、100人は集めるのも続けるのもしんどいから、50人で顔の見える関係にしたい。そう思ったんです。

メデコミ会を通じて知り合った人だと、今、大まかに1000人くらいは顔と名前が一致して、仕事を理解しているんじゃないかと思います。

私は、メデコミ会に来てもらった人は、来る前と何かが変わった、という経験をしてもらいたいんです。それは、そこでしか会えない人との出会いだったり、まったく違う仕事の存在を知ることだったり、自己紹介するために頭の中で整理する機会だったり、いろいろあると思うんです。わざわざ忙しい平日に出かけてきてもらうんだから、何かを持って帰ってもらいたい。そんなことをずっと考えながらやってきました。

SNSが5年くらい前から普及して、今、ゆるいつながりの時代、みたいに言われますが、そのゆるいつながりって、「ずっとつながってる関係」ではなくて、「つながりやすく、離れやすい関係」だと思うんです。ところが、コミュニティをやろうという人の中には、名刺交換してメーリングリストに登録したら、関係が「人」ではなく、「数」だと考えてしまう人が意外に多い。そういう人は、「つながり」は当たり前で「囲い込み」だと思っている。でも、今、囲い込まれている人なんて、いません。 また、みんな忙しくて、必要に迫られていること以外はなかなかできません。会う必要が生じないと本当に2度と会わないんです。だからこそ、コミュニティを真面目に立ち上げようと思ったら、一人ひとりと一生懸命向き合って、相手を大事にし、関係を発展させる努力をしないといけないと「つながり」は維持さえできませんよね。そういうとこで手を抜いてしまうと、うまくいかないんじゃないかな、と私は思います。

 

面白い会があったら、私にもぜひご紹介ください。

長文、お付き合いありがとうございました。

     

五反田の会場でのメデコミ会は、いよいよ来月12月7日(月)が最後になります。ぜひ皆さんお誘いあわせの上、ご参加ください

そして、2010年からのメデコミ会にもぜひ、ご注目、お付き合いいただければ嬉しいです。

 

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投稿者 MT : 2009年11月03日 18:01