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メディアの日米比較

大統領とPR

アメリカにおける日本報道のツボ

バーソン・マーステラ・アップデート

 

 

メディアの日米比較
(11/30/98@NY)

日本のメディアのことが気になり、メディア関係の方々に話を聞いたところ、面白かったのでいくつか御紹介します。

1)新聞
●どのニュースをカバーするかは、大ニュースの順に紙面を埋めて行って埋まった所で、おしまい。それより優先順位の低いニュースは、その日の新聞には載らないことになる。逆にニュースの少ない日は、どこかのセールまでがニュースになったりもする。つまりカバーされるニュースは、その日の相対評価によって決まる。
●日本の新聞とアメリカの新聞の違いは、日本の方が、記者会見等の発表ネタが多く、アメリカの方が、個人の取材・分析ネタが多い。
●売上部数は、読売新聞900万部、朝日800万、日経300万に対して、ニューヨーク・タイムズは160万部程度。日本の場合、一世帯あたり一部以上の新聞が購読されている計算になる。
●日本は全国紙が多く、アメリカは地方紙が多い。

2)テレビ
●日本のテレビ・ニュースの順番は、大まかに
1−政治ニュース(国会など) 2−経済 3−社会 4−国際 5−ローカル (このあとスポーツ?) スクープや大事件が入ると順番は変わる。
●日米の比較では、アメリカのニュースは、各カットの時間が短くテンポが早い。(これによって、速報性・即時性を強調しているのか?)
日本は、一度見て、(前提としては)誰にでも理解できるように編集されているため、アメリカ人が見ると、のんびりしていて退屈(?)。
●ドキュメンタリーの作成方法。日本は構成表を作って、映像や音の時間を割り振ることから始めるのに対して、アメリカでは、映像をとってから、その映像が活きるように編集する。ライブ性を重視。(日本は手続き重視(?))

大統領とPR
(1/26/99@NY)

大統領の弾劾問題について、多くの人は、もういい加減飽き飽きしています。毎日「モニカ・ルインスキー」だし、手続き自体は同じようなことをやってるし、何がどうなのか、手続き自体が分かりにくいし、「それより、棚上げされているほかの大事な仕事を進めて行け」と国民は、うんざりしています。

それに対して、私はどちらかというと、興奮して事の成り行きを見守っているんです。それはなぜか?

国民に嘘をついた(裁判でも嘘をついた)大統領が、辞任しないばかりか、その政敵がどんどん辞めて行くという奇妙な現象が起こり、なおかつ国民の支持率が異常に高いからです。

「Justiceの国で、なぜ国民を裏切った大統領を、国民は支持するのか?」とアメリカ人の友人に聞いたら、「何がJusticeと言うかが問題よ。少なくともスター独立検察官側は、Justiceの側には立っていない」と言います。

このケッタイな認知に驚くと同時に、PRの大きな可能性を感じ、私は興奮しています。普通、スキャンダルは、起こす方が弱いんです。それが、今回は、突付く方が弱い。普通、スキャンダルを起こしたら、責任を取って辞めるんです。「世間を混乱させました」と言って。今回は、「国民の為に私は働く」と踏ん張って、それを国民も支持しています。

さて、日本であまり馴染みのないPRですが、アメリカでは物凄い市場規模の業界です。ホワイトハウスも業界大手のPR会社を何社も抱え、イメージアップに利用しています。昨年10月にジョン・ポデスタが大統領主席補佐官に任命されたことが、分かりやすい例でしょう。彼は、長年PR会社を経営し、メディアを使ったPRとロビー活動をしていた人です。国務次官のタルボットも元はタイム誌の編集者であり、国務省もメディア対策を重視していることが分かります。こういった人事からも政策の中身の重要性も然る事ながら、その政策発信の重要性も理解していることが窺い知れます。

相対するケニス・スター独立検察官側は、そういう意味でPRが弱い。弱すぎるんです。有能な弁護士が大きなチームで取り組んでいるという印象はあるのですが、国民の認知は、「自分の名前を売るのに必死」という印象が強い。大統領が毎日テレビで熱心に仕事をしている場面が放映されるのに対して(毎日欠かさずテレビに出るよう、意図的に撮影させています)、訴追側は、全くメディアを使っていません。今日、スター検察官が何をしているのか、全く分からない。だから弱い。

弾劾手続きが進む1月19日火曜日には大統領の一般教書演説(State of Union)がありました。非常に具体的で、重要ポイントについてひとつずつ、順番に目標を述べていくんです。いかにも「ちゃんと国民のために仕事してるで」というポーズが見える。

最後は、信教や民族を超えて共感するテーマを唱えて、100年後の未来の話をしました。(遠い先の話をすればするほど、相対する人々の心が近づいていくんです、心理学的にはネ)誰が書いたか知りませんが、立派なスピーチでした。科学的にも。ゴールデンタイム夜9時(東海岸;8時中部時間)〜という、国民が最もテレビを見る時間を選んでいることも重要です。

こんな完璧なPRをやってたら、何も手を打ってない方は、いくら正義でも正義でなくなります。PRの世界ではPerceptions are Realityですからね。

ちなみに世界一有名な女性となったモニカ・ルインスキーは、PR会社最大手の1つ、Hill&Knowlton社と契約をして、次の売りこみを考えてるようですね。

日本も早く対策考えないと、世界の視聴者を相手にしているアメリカのメディアに「アメリカに都合のいい」日本イメージを「世界の世論」にされてしまいます。 

(おっと、つい、専門の話で興奮し、長くなってしまいました)

アメリカにおける日本報道のツボ
(2/14/99@NY)

自分で書くと分かる、なぜニューヨークタイムズに「いい日本」が紹介されないか。

ライティングのクラスで、日本人コミュニティに関する記事を書きました。1000 Words、雑誌・新聞タイプの文章です。授業のテーマが社会問題なので、あるコミュニティ(何でもいい)で問題になっているニュースを取り上げるのですが、これがなかなか難しいんです。

まず、アメリカ人が読んで、面白いかどうか。これが一番の尺度です。アメリカ人との関連性。これも大事。あと意外性、特殊性を考える。問題の渦中にいる人の、つまり被害者、代表者のコメントもいる。

そうすると、書ける内容って限られて来るんです。

これに対して、私の書きたいのはこうです。
日本のことを扱う。あと、日本と日本人のイメージアップにつながる話。

で、結局書いたのは、「駐在員夫人の抱えるストレス」(笑)

「う〜ん、ニューヨークタイムズの路線やな。またケッタイな日本人像が産まれていく・・・」と思いつつ。

難しいんです。外国人コミュニティのニュースというのは。読者は基本的に自分と関係ないものは読まないし、頭にも残らないんです。日本でハイチやシェラレオーネの記事がほとんど載らないのが良い例でしょう。どれだけ大事件でも、心理的に遠いとニュースになり
にくいんですね。あと、いい話。よくできました、という話はニュースにしにくい。「これが問題だ」という方がずっとインパクトがあるからです。

ただし、いい話は、人に焦点をあてると書きやすいし読みやすい、ということも分かりました。こんなことをしてる人がいますよ、という紹介記事は読むんです。だから、日本人のイメージアップ記事には、その国の問題に取り組んでる日本人を紹介すればいい →在外公館の広報は、地域で活躍している日系人の発掘と紹介をもっとしたらいいのだと思います。

さて、一週間後締め切りの次の記事は、何を書こう。
どなたか、アイデアください。

バーソン・マーステラ・アップデート
(6/19/99@Tokyo)

しょっちゅう聞かれますから、ここでちゃんと紹介します。バーソン・マーステラというところは、一体何をしてる会社か。

 バーソン・マーステラは、広報会社です。

 ここで、10人中8人から9人が「電通とか博報堂みたいな?」と言います。でもそれは広告会社。広告会社は、簡単にいうと、ポスターの作成をします。つまり絵をつくる。その絵の下には、社名が入る。テレビでは、タレントを使ってCMを作る。そして最後に商品名を言う。 それが広告。

 それに対して、広報は、ニュースを作る仕事です。正確に言うと、ニュースに取り上げてもらうための仕事ですね。記者会見をセットしたり、スピーチを書いたり、プレスリリースを出したり、ニュースに取り上げてもらうために、様々なイベントを仕掛ける仕事です。スポークスマンのネクタイをアドバイスしたり、カメラ映りがよくなるようにメディア・トレーニングをしたりするのも広報会社の仕事です。

 で、バーソン・マーステラは、その広報業界で世界最大の会社です。一番有名なクライアントは、ホワイトハウス。キャバレーでもラブホテルでもありません。つまり、あの、モニカ・ルインスキー危機も乗りきった会社、ということになります。各国政府からの依頼もしょっちゅうあります。97年、イギリス労働党が与党を破った際も、バーソン・マーステラのコンサルタントたちが活躍していました。

 働いてみて、なかなかしっかりした会社だと思いました。30ヶ国以上にある支社のデータがコンピュータ・ネットワーク上にあるし、各ヘッドクウォーターにある、ナリッジチームと呼ばれるバーソンの頭脳チームに問合せをすると、24時間以内にこれまでのケース、資料を惜しみなく送ってきてくれます。

 ちなみにもともとアメリカの会社で、アメリカ人の社長ほか外国人がいることもあって、社内文書は全部英語。社長や役員が入る会議も英語です。いい点は、15分で終わると言った会議が、本当に15分で終わること。あと、この会社は、会議室の入口に一番近い席に社長が座ります。私がはじめ「謙虚に」そこに
座っていたら、「入社二日目に座る席やない」と社長に怒られました。そんな彼は、会議でペンを持ち、ホワイトボードに向かって、進行役も勤めます。

 ただし、「チームワークだ」と言いつつ、いろんな所から仕事が降ってくる(手伝わされる)のはどこも同じで、一週間目にして、パワーポイントのプレゼン用
スライドを作り、大手企業のスピーチ原稿のための翻訳をされられ、何度も会議に呼ばれて、新規マーケット参入する製薬会社のためのアイデアを5分間で5つ出せ、などと言われ、なかなか「大学院の夏休み」も味わえない状態です。

 何はともあれ、なかなか刺激的な会社です。

注意:興味をもって、インターネットで調べて見ようと思われた方は、アメリカのサイト をご覧ください。東京のサイトは、私が作りました http://www.b-m.co.jp

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