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大統領選挙の楽しみ方

選挙とイメージ

日本の葬式ビジネス

アメリカ経済はバブルか

 

大統領選挙の楽しみ方
(1/22/2000@NY)

予備選が近づき、アメリカのメディアは、選挙の話題で盛り上がっています。政治広報を勉強している私にとって、大統領選は最大のお祭りです。各候補
者がどういうイメージで売るか、どんなメッセージを発信するか、という点が非常に興味深いのですが、いろいろトピックがある中で、今回の選挙は、私は、2つの点で特に面白いと思うのです。

1つは、インターネットの影響。
大統領選のキャンペーンで初めてインターネットが使われたのは、92年ですが、この時はまだ、限られた候補者が、簡単な個人情報をホームページに載せる程度に留まっていました。96年選挙では、ほとんど全ての候補者がホームページを持っていましたが、まだ「活用される」という感じではなかったそうです。

そして、今回。「インターネットが大統領選キャンペーンを大きく変える初めての年」と言われ、多くの候補者は、インターネットの活用法を研究し、サイトで候補宣言をするなど(フォーブズ)、話題作りに工夫を凝らしている感があり、主にサイト上の資金集めとEメールによる「今週の動き」及びボランティア情報の発信で成果を上げています。

他方、インターネットを軽視していた候補者(ブッシュのこと)は、パロディサイトを訴えて裁判で負けたり、「インターネットがキャンペーンにそれほど重要だとは思わない」と言って、評論家から笑われたりしていました。もっとも最近、認識を改めたのか、積極的なオンラインメッセージの発信に力を入れ始めたようで、この候補者のインターネットキャンペーンの話題も時々ニュースに出てくるようになりました。

さて、先学期、研究のためにゴア副大統領のキャンペーン・メルマガ(英語ではEmail Newsletter)の登録をしたのですが、これが、ペーパーを書き終えた今なお定期的に送られて来るので困っています。簡単に申し込めるのはいいのですが、実はこれ、サイト上で、解除(解約)できないのですな。これから予備選ということは、ひょっとして、今後、送られてくる頻度は増す一方? 

大統領選が面白いと思う、もう1つの側面は、候補者同士の比較広告。相手候補をけなすCMです。

比較広告は、日本では禁止されていますが、アメリカでは見ごたえが有ります。はじめて見ると、なんとなく、「これはひどい、反論する側の感覚を疑う」というのが正直な印象ですが、実はこれ、日本のワイドショーと同じ中毒性があるんです。はじめは拒絶感があっても、すぐ慣れる、いや、馴染むんですな。段々、そこでの「戦い」を、視聴者は期待するようになる。
「ここで戦いを受けて立たない候補者は、国民から支持されない」(コロンビア大ナコス教授)とまで言われています。ディベート番組で黙っているようなものでしょうか。

議論という点で思い出すのは、日本の日曜朝の報道番組(フジテレビの報道2001を指しています)に物足りなさを感じることです。毎週見てるけど。政治家を招いて話を聞くのはいいのですが、司会が完全に負けているのです。遠慮しているのが伝わってくる。「あなたは大臣、私はサラリーマン」という構図がはっきり見えるんです。これでは、面白くない。相手に敬意を払う必要はあるけれども、役割分担がありますからね、気負けしてプロの仕事を忘れたら、あきませんわ。

この点、年末にCNNで面白いのを見ました。番組のアンカー、ラリー・キングが、クリントン大統領に単独インタビューし、「ルインスキーの件は、今ではどない思ってますのん?」「任期終わりに差しかかってるけど、公約に掲げたあれとこれとあれと、えらいたくさんのことが達成されずに残ってますな。どないしますのん?」「大統領早く辞めたいと思ってない?しんど
いでしょう?」など、実に素朴で、しかし、最も視聴者が聞きたい質問をズバズバ聞いていたのです。その他、この番組には、大統領候補者も、日頃よく迎え入れていて、あの候補者はこう言ってるけど、それに対してどうなの?とか、「あれ、以前に言ってたことと変わってきてない?」「その場合、これはどうなるの?」 と、自らの問題意識と経験を混ぜながらインタビュ
ーします。

彼(ラリー・キング)の素晴らしいところは、ズバスバ聞いて細かく突っ込む割に、番組の最後には、なぜか迎えたゲストに、ヒーローのようなイメージを与え、見ている側も番組全体にいい印象をもってしまうことです。その経験によって、ゲストはまた戻ってきたいと思い、またCNNの看板番組として、世界中の視聴者を引きつけるのでしょう。痛い所をつきながら、最後
には良い気持にさせる、そんな技術を私も身につけたいものです。

選挙とイメージ
(3/23/2000@NY)

スーパー・チューズデーを経て、共和党・民主党の大統領候補者が、事実上決まりました。志村けんが爺役を演じているような顔をしたジョージWブッシュと、「リーダー顔」作りのために徹底的なメデイア・トレーニングを受けて、爬虫類系の顔になってきたアル・ゴア。いくつかの要因がありますが、この二人が選ばれたのは、主に資金力によるもので、私には、面白味がなくなってがっかりしています。

広報的視点で見ると、共和党は、マケイン候補が出てくる方がずっと面白かったのです。広報戦略を重視し、インターネットを活用して、個人から多額の寄付を集め、共和党だけではなく、民主党支持者からも票を集めていた彼は、「イメージ」が、選挙に行かない若者を、どれだけ政治参加させる力になるかという点を示す良い例だと私は見ていました。

若者の政治離れの深刻さが叫ばれて久しい日本ですが、アメリカも同じ状況にあります。1972年の選挙で18〜20歳の投票率48%、21〜24歳の投票率51%であったのに対して、96年の選挙では、18〜20歳:31%、21〜24歳:33%、45歳〜64歳の投票率が64%(連邦選挙委員会データ)ですから、この不均衡は大きな問題。

ちなみに、この問題を是正するために、ネット投票という手段がとり入れられ始めていて、アリゾナ州やアイオワ州ではすでに実用化されている模様です。こうしたネット投票を経験した若者は、約85%がまたこの手段で投票したいと答え、あるメディア調査会社のデータによると、3分の2の大学生がネットでなら投票する、と答えていると言います。 

若者が投票しないのは、基本的に政治不信によるものです。政治は汚いものと感じている(政治的不信感)ことと、自分が投票しても何も変わらないという思い込み(政治的無力感)があること。つまりネガティブ・イメージがある。

それに対して、ネットでなら投票するという理由は、インターネットの手軽さと「自分にもインパクトを与える力がある!」という可能性を実感しているからです。

日本では昨年夏、東芝の対応の悪さをウェブで公表したものが大きなニュースになりましたが、ああいうのは、アメリカではなんぼでもあります。

スターバックスのイチャモン付けサイトからジョージ・W・ブッシュのパロデイサイトまで、誰でも好き勝手なことを言っている。そして、同じことを思っている人々がそのサイトに自然に集まってコミュニティを作っているのです。そういうのが、ネット投票の親近感に結びつくのでしょう。(ノーベル平和賞を受賞した、対人地雷撲滅運動のNGOも、外でデモをやるよりパソコンに向かって世界中にEメールを送っていることの方が多かったと言います。)

まぁ、いろいろ考えても、マケインがブッシュに負けてしまったのは事実ですから、メッセージを科学する、といった類の選挙戦が終わった気がしてちょっとがっかりです。マケインがジヨン・トラボルタに似ていると言って、大反発にあったのも今では懐かしい思い出。これで、アル・ゴアが「当選したらマケインを副大統領にする」なんて言ったら、彼の当選率もかなり上がるのではないか、と見ているのですが、まともな筋の人は、私のこの意見をちゃんと取り合ってくれません。(コソボのNATO陸上戦に賛成した唯一の共和党議員として、マケインが民主党政権に取り込まれる可能性は、ないこともないと思うのですけどねー。あきませんか?)


日本の葬式ビジネス
(4/10/2000@NY)

「マネー・ストーリー」を取材するという学校の課題で、ふとしたきっかけから日本の葬式ビジネスについてまとめました。ケッタイな業界ですよ。

葬式業界は、景気に影響されず死者の安定的増加傾向(人口の高齢化→年間死者数増加)に支えられ、確実に拡大しています。

政府推計によると、この先四半世紀に日本の年間死者数が2倍になる。91年83万4千人→2025年169万4千人。毎年約2%の増加らしい。

全国葬祭業協同組合連合会(全葬連という)に問い合わせたところ、葬祭業は許認可事業ではなく、兼業者も多いため実数は把握できていないものの、現在日本には4000〜4500の葬儀社があるとのこと。これも毎年200程度ずつ増えて行っている様子。ちなみに葬式業者のサービスの質的向上を目的として作られた「葬祭ディレクター」という資格があります。労働省認定。− キャリア・アップを考えて受験を検討される方はこちらを:

一回の葬式にかかる費用は平均300万円。カード払いや振り込みは難しく、ほとんど現金払い、領収書なしとのこと。私の親は、祖母の葬式を経験して「慌てて保険に入った。」と言います。

何よりケッタイなのは、業者の関係です。

まず、病院で誰かが亡くなるとします。病院は葬式屋を紹介する。葬式屋がかけつけて霊柩車や葬式、火葬の手配をする(日本の95%は火葬)。知らない間に花屋や遺影を作る写真屋がアレンジされています。葬式屋は、家族の宗派を調べて、お寺の紹介(仏教の場合ね)をする。お寺は墓石屋(墓をもってない場合)や仏具屋を紹介する。これに加え、大体、訃報は新聞の地域面に載りますから、それ見て、別途、墓屋(霊園など)、墓石屋、仏具屋、仕出し屋などから営業の電話・ダイレクトメール・訪問があります。(ちなみに葬式の入り口で「今日はわざわざ・・・」と挨拶している人は葬式屋のスタッフであることも多い。)

そしてそれぞれが、ケッタイなものを売っています。

ある葬式屋は、ハイテク葬式のサービス。電飾をつけた長さ40メートルのトラックが棺桶を運びます。親族は、棺桶のそばに座りながら、お経とシンセサイザーの音楽とカラフルなスモーク、レーザー光線の演出を見て最後の別れを惜しみます。

墓不足の心配からか、埋葬の場所を死ぬ前に自分で選んで契約しておくことも流行りで、最近は、月の上に墓を作って埋葬するもの(2020年頃開始予定。数年前のデータで数百人が申し込んでいるらしい。)もあります。業者は、「家から遠く離れた墓を購入して、あまり墓参りできないより、月夜に見上げて、その都度思い出す方が先祖供養になる」と言っていると
か。 また、7gの遺骨(灰)をカプセルに入れフロリダからロケットで宇宙に放つ宇宙葬は既に4、5回行われていて、これが一人(カプセル)100万円。遺族のためのセレモニーも、ロケットの打ち上げ会場で開かれています。( www.uchusou.com )

墓石業者も随分工夫していますよ。人気のデザイナーや彫刻家に墓石のデザインをさせたり、傑作なものでは、「地震の多い関東でも安心」の耐震保障付き墓石も販売されているようです。

調査中、お金をかけるのは当人のためではなく、見栄の要素が大きいと感じていた矢先、「結婚は親の甲斐性、葬式は子の甲斐性」という言葉があると聞きました。

さて皆さんは、一体何を思いましたか?

アメリカ経済はバブルか
(4/10/2000@NY)

相場というのは面白いと思いませんか?必ずしもモノ自体の価値を絶対尺度にして値段が決まっている訳ではないのです。スーパーのキャベツは季節で値段が変わり、寿司屋のマグロは、「マグロ」の値段以外に、板前さんの給与と競り落とした値段が影響します。そこにはドラマがある。?

最近、アメリカのマスコミが、しきりに「この好景気はバブルではないか?」という報道を始めています。経済学の解釈がどうであれ、こうした報道が、そのうち実際に、その破裂するバブルを作っていくと私は思っているのです。

為替のように変動相場制のものは、流通量や中央銀行の利息など基本データを示す数値も相場の決定要因ではありますが、その他に思惑(speculation)というのが、1つの重要な判断材料になっています。

つまり、「皆がこう信じているから、こうなるやろう」という判断がモノの値段に影響している。昨今のインターネット関連企業の株価の値上がりは、主にこれです。

そうすると、当然、一般的な「こうなるやろう」が分からなくなると、流れが変わります。昨今のマスコミの報道を見ていると、その兆候があるように思うのです。

日経新聞のネットでこんなのを見つけました。

-------2000/04/06 10:59

グリーンスパン議長、再利上げを示唆
【ワシントン5日=吉次弘志】

グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は5日、ホワイトハウスで開かれた「ニュー・エコノミー会議」で講演し、「あらゆる可能性について警戒を怠ってはならない」と語った。
将来のインフレに改めて懸念を示すことで、5月の連邦公開市場委員会(FOMC)で再利上げ実施を決める可能性を示唆したと受け取られている。株価動向については「金融政策は資産価格の水準を目標としないと述べるにとどめ直接の言及を避けた。

グリーンスパン議長は「ここ数年と過去の景気循環は大きく異なっていることは否定できない」と指摘、「ニュー・エコノミー」論に一定の理解を示した。その一方で、将来の成長期待を先取りした株価上昇などの「資産効果」で、供給能力を上回る需要が引き起こされることを懸念。同議長は「上技術革命を通じた今後の生産性向上は予見ではなく希望的観測」「結論は歴史でしか判断できない」とも語り、これ以上の成長期待の高まりに警戒感をにじませた。
-------

グリーンスパンは、市場が大きくなり過ぎて、もはやFRBに現在の経済をコントロールする力がなくなっていることを認識していながら、でも、それを認められないからとりあえず、景気を盛り下げないような、社会が混乱しないようなコメントだけ出している、という感じに聞こえるのは私だけでしょうか。ブームを理由に出てきた投資資金は、お金がうまく回っているうちはいいのですが、どこかでストップすると、サイクルが破綻しますからね。

もちろん、このグリーンスパンの発言は、FRBの立場で出せるものとしては、広報的には最も適切で効果的なものだと思いますが、どうも、インフレ率と失業率が低いだけでは、以前のように経済を安定させられなくなった、まいった、21世紀ニューエコノミー時代の中央銀行の役割は?なんて不安な気持ちが入っているように聞こえてしまいます。(経企・日銀・大蔵の方、経済専攻の方、間違ってたら、よく分かるように教えてください)

多くの高校出たて、大学出たての若者が、人気サイトを作って億万長者になる一方で、それ以外の分野の仕事に従事する労働者が、毎日ちゃんと働いているにも関わらず、高騰する家賃を払えなくなってホームレスになっている現実(シリコンバレーなど)があります。こういうのは正常な状態ではないと、きっとマスコミを始め、多くの人が思っているのでしょう。

それを反映したバブルの懸念を示す記事は、儲け損ねている人のやっかみもある程度あるでしょうが、どんな仕事をしていても、せめて普通に生きていける社会を求める多くの人々が、やはりその景気も決めていることを示しているのかも知れません。アメリカでは、景気も民主主義、ということですか。

《余談》全然関係ありませんが、初めてコロンビアでFRBのことを示すFedという単語を聞いた時、私はFedExのことだとばかり思っていました。そのFedに就職する学生も多くて、とても不思議だったんです。これは、日銀とペリカン便を間違えているようなものですから、皆さん、御注意を。

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