アメリカ経済はバブルか
(4/10/2000@NY)
相場というのは面白いと思いませんか?必ずしもモノ自体の価値を絶対尺度にして値段が決まっている訳ではないのです。スーパーのキャベツは季節で値段が変わり、寿司屋のマグロは、「マグロ」の値段以外に、板前さんの給与と競り落とした値段が影響します。そこにはドラマがある。?
最近、アメリカのマスコミが、しきりに「この好景気はバブルではないか?」という報道を始めています。経済学の解釈がどうであれ、こうした報道が、そのうち実際に、その破裂するバブルを作っていくと私は思っているのです。
為替のように変動相場制のものは、流通量や中央銀行の利息など基本データを示す数値も相場の決定要因ではありますが、その他に思惑(speculation)というのが、1つの重要な判断材料になっています。
つまり、「皆がこう信じているから、こうなるやろう」という判断がモノの値段に影響している。昨今のインターネット関連企業の株価の値上がりは、主にこれです。
そうすると、当然、一般的な「こうなるやろう」が分からなくなると、流れが変わります。昨今のマスコミの報道を見ていると、その兆候があるように思うのです。
日経新聞のネットでこんなのを見つけました。
-------2000/04/06 10:59
グリーンスパン議長、再利上げを示唆
【ワシントン5日=吉次弘志】
グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は5日、ホワイトハウスで開かれた「ニュー・エコノミー会議」で講演し、「あらゆる可能性について警戒を怠ってはならない」と語った。
将来のインフレに改めて懸念を示すことで、5月の連邦公開市場委員会(FOMC)で再利上げ実施を決める可能性を示唆したと受け取られている。株価動向については「金融政策は資産価格の水準を目標としないと述べるにとどめ直接の言及を避けた。
グリーンスパン議長は「ここ数年と過去の景気循環は大きく異なっていることは否定できない」と指摘、「ニュー・エコノミー」論に一定の理解を示した。その一方で、将来の成長期待を先取りした株価上昇などの「資産効果」で、供給能力を上回る需要が引き起こされることを懸念。同議長は「上技術革命を通じた今後の生産性向上は予見ではなく希望的観測」「結論は歴史でしか判断できない」とも語り、これ以上の成長期待の高まりに警戒感をにじませた。
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グリーンスパンは、市場が大きくなり過ぎて、もはやFRBに現在の経済をコントロールする力がなくなっていることを認識していながら、でも、それを認められないからとりあえず、景気を盛り下げないような、社会が混乱しないようなコメントだけ出している、という感じに聞こえるのは私だけでしょうか。ブームを理由に出てきた投資資金は、お金がうまく回っているうちはいいのですが、どこかでストップすると、サイクルが破綻しますからね。
もちろん、このグリーンスパンの発言は、FRBの立場で出せるものとしては、広報的には最も適切で効果的なものだと思いますが、どうも、インフレ率と失業率が低いだけでは、以前のように経済を安定させられなくなった、まいった、21世紀ニューエコノミー時代の中央銀行の役割は?なんて不安な気持ちが入っているように聞こえてしまいます。(経企・日銀・大蔵の方、経済専攻の方、間違ってたら、よく分かるように教えてください)
多くの高校出たて、大学出たての若者が、人気サイトを作って億万長者になる一方で、それ以外の分野の仕事に従事する労働者が、毎日ちゃんと働いているにも関わらず、高騰する家賃を払えなくなってホームレスになっている現実(シリコンバレーなど)があります。こういうのは正常な状態ではないと、きっとマスコミを始め、多くの人が思っているのでしょう。
それを反映したバブルの懸念を示す記事は、儲け損ねている人のやっかみもある程度あるでしょうが、どんな仕事をしていても、せめて普通に生きていける社会を求める多くの人々が、やはりその景気も決めていることを示しているのかも知れません。アメリカでは、景気も民主主義、ということですか。
《余談》全然関係ありませんが、初めてコロンビアでFRBのことを示すFedという単語を聞いた時、私はFedExのことだとばかり思っていました。そのFedに就職する学生も多くて、とても不思議だったんです。これは、日銀とペリカン便を間違えているようなものですから、皆さん、御注意を。
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