つるつるのトップに戻る
コロンビア日記の部
 

日米大学院比較

10人のパレスチナ人ジャーナリスト

大学はサロンだ

コロンビア・アップデート 

 

日米大学院比較 (9/13/98)

コロンビアは、全米で最も授業料の高い大学の一つです。それに加えて、うちの学部に入ってくる人は平均27歳と、そこそこ実務経験のある人が多いこともあって、学生の目的意識が非常に明確です。

ある人は「私は、ここで環境のNGOの運営についてマスターするの。入学前は、司法省で大臣の直属プロジェクトに携わってたんだけど、関心が変わってきちゃってさ。NGOの資金調達の方法とか、ロビー活動の仕方、スタッフの集め方とかを学びたいの。卒業のときには、具体的なプログラムを作ったり、それを評価・査定できるようになってるわ」なんてことをニコニコしながら言う。

授業では、講師も「君たちのこれまでの経験と、関心事項と、この授業をとった目的を教えて欲しい」と聞き、何十人もの教室で一人ずつ自己紹介と希望を述べて行く。講師は、それを聞いて、「・・・についての関心が高かったわね。じゃあ、それについて、ちょっと時間を割きましょうか。ただ、・・・については、私自身の経験から言うと、あまり詳しい分野ではないので、ここでは取り上げられません」と答える。学生は授業を購入し、そのカスタマーの希望で授業内容が動いていく。

また、教授は皆、Eメールアドレスや電話番号、オフィスアワーを公開して、誰でも気軽に接触できるような<雰囲気>を作っている。

学生は、「あの授業面白そうだから、プロジェクトをまじめにやって、本にまとめて出版しないか?」と互いに声をかけたり、「このテーマは突っ込んで調査したいから、今度、誰それをここに招いて、話を聞く機会を作らないか?」と誰かが言えば、知らない間に、日時がセットされていたりする。

 

 

10人のパレスチナ人ジャーナリスト (11/7/98)

10月20日、国連とコロンビア大の共同プログラムで、10人のパレスチナ人ジャーナリストが招かれ、パレスチナ及びイスラエルにおける報道の現状を質疑応答形式で話すという会があり、中間試験の合間にちょこっと顔を出して、聞いて来ました。

彼らは、いわゆる「言論の自由」が保障されていない、ということを切に訴えるんです。自分の書いた文書が世間に出るまでにイスラエル政府(「軍」という言い方をしていた)の検閲を受け、アラビア語の文書がヘブライ語になって返ってきて、それをまたアラビア語に翻訳してからでないと発行できない、とか。エルサレムで取材活動をするために、プレスのパスを何年もかかって取得する必要がある、とか。ジャーナリストとしての活動で、何年も留置された仲間が大勢いる、とか。私の同僚がこの前イスラエル兵に銃で撃たれ、今も瀕死の状態にある、とか。

どれも強烈な文句ばかりでした。私もイスラエルに行ったことがあるし、イスラエル人の知人がパレスチナ人の自爆テロで亡くなったとも聞いているので、そんな話もかなり現実味がありました。

そんな厳しい現実の話をしていた時に、サッと学生が一人手を挙げて発言したんです。「私はこの夏にガザで記者のインターンをしたので現状についてはよくわかるつもりです。あなた方の話は、現状については細かく説明されてよく分かりますが、じゃあ、どうすれば改善されると思っているか、全然伝わってきません。」
30歳前のコロンビア・ジャーナリズム・スクール女子学生のこの一言でジャーナリスト(聴衆もマスコミ関係者が多い)同士の激しいディベートが始まりました。

「アメリカ人のジャーナリストはガザにオフィスをおいていても全然いない」「彼らはイスラエル人側ばかりをカバーしている」「ガザの話は時々電話で聞くだけだ」「ジャーナリスト同士の接触は?」「イスラエル人ともアメリカ人ともうまくやってる」「彼らを通じて、もっと国際世論に働きかけるべきでは?」「彼らの本社の関心はイスラエル側にあって我が方には向いてない」「人々が知らない重要なニュースをレポートするのがジャーナリストの本分では?」「検閲などの厳しい規制で我々には手段がない」「今ここで新しい関係を作ったらいいじゃないか」「じゃあ、君に名刺を渡すよ。アメリカの窓口になってくれ」 

何十年もジャーナリストをやっている人々が、ジャーナリストの卵たちに「君たちが次の時代のディシジョン・メーカーになるのだから」と言い、このように同じ目線で議論ができるというのは、大変素晴らしいことだと思い、レモネードを飲みながら、ふと、「これは記者の記者会見だ」などと訳のわからない事を思ったりしていました。コロンビアはやはりいい大学です。 (?)

大学はサロンだ 11/17/98

アメリカの高等教育が優れていると言われる訳は、実社会と教育機関の距離が非常に近いことも大きく影響しているように思います。 

各業界のキーマンが頻繁に講演に来るし、小人数の授業でも、先生の知り合いなどだと「君たちの意見を是非とも聞きたい」と言って大企業のCEOやChairmanが現われ、プロジェクト会議のようなディスカッションが行われます。考えてみれば、これは物凄く貴重な機会で、私などは口をパクパクさせながら聞いているだけなのですが、他の学生の方は全く動じることなく、「こんなん言うたら失礼ちゃうか」等とも考えず(時々呆れるような質問もする)、改善点や問題点を堂々と指摘します。相手もまた、それに対してうまいこと説明して、学生を納得させるんです。理想的 
な世代間交流。 

こういう機会は、両方にとってメリットがあると思うんですよね。来てくれる方も、我々に対して自分の後継者候補みたいな感覚を持って、相当ディスカッションで飛び出す意見に期待している人が多いし、まぁ実際、社交辞令で話してる訳じゃないので、生の意見がポンポン出るし、学生の方も、もちろん実社会の貴重な話を聞けることと、何より自分たちが社会で求められている存在だというプライドを持つことが出来るので良いと思うのです。 

世代間交流のできるサロンとしては、イギリスではパブであったり、アメリカでは大学だったりするのですが、日本ではどこに相当するのでしょう。日本の場合は・・・うーん、大学時代に行うバイト先なのかなぁ。 
50種類以上バイトをした中で、ペリカン便の集配所で配達のおっちゃんとした話や飲み屋での常連客との会話をなんとなく思い出したりなんか、するのですが、学部時代、授業をまじめに聞いたことのない私は、日本の大学は、一体どうなのかな、今度日本人に聞いてみよう、なんて思うのでした。 

コロンビア・アップデート (12/20/98)

●恐怖の1週間・4ペーパー終了。あとはミクロ経済の試験のみ。キツイ一週間でした。クリントンもキツイ日々を送ってることでしょうが、私の方が、きっと、もっと大変だったと思います。なんせ、つるつる通信も書けないくらい、忙しかったわけですから! 日本の衛星放送業界の競争についてのペーパーを書いたあと、統計の分析をして、環境問題のペーパー書いてから、多国籍企業とNGOが国際政治に与える影響について、書きました。何書いたのか、あまり覚えてませんけど。

それにしても、疲れると、奇妙な現象がいろいろ出てくるんです。御存知ですか?

たとえば、歯ブラシでヒゲを剃ろうとする(そこで思わず「なんでやねん!」と自分にツッこんでしまう。)。コーヒーを飲もうとして、冷蔵庫からバターを取ってくる(台所で、一人で、「ちがうがな」)。 ヘアー・ジェルをハンドクリームと思って手に塗りこむ(今日のクリームは、妙にベタつくな、と思いつつ)。CD聞いていて、音量を下げようと、リモコンを操作したら、テレビ
がついた(おお、君、そこにおったんかい)。

●図書館で勉強していて、いろんな人がいることに気付きました。手にメモしてる人は日本人よりアメリカ人の方が多いようですね。やっぱりB型かAB型の人が多いんでしょうけど(独自の調査による)。 ビジネス・スクールの図書館では、パソコンでテレビ見たり、ラジオ聞いたりしながら、勉強してる学生がいます。インターネットで使える機能も充実したものです。24時間開いてる中央図書館に、朝行ったら、ソファで寝ている学生も多い。どこででも寝られるのは、特技やと思うけど、君ら、こんなとこで寝てたらカゼひくし、親心配するで。

●成績の話
メディアの学科長と話をしていたら、「日本人は、英語が下手な上に、ペーパーも悪いんや」と小言を言われてしまいました。自分のことを言われているのかとも思いましたが、この先生の授業は取ったことがないので、言われる根拠も筋合いもなく、人事だと思って、いろいろ考えてみました。

「英語も下手で、なおかつペーパーも悪い」という認知の仕方は、興味深いものがあります。「英語」というのは会話とか発言の事で、現場の話やから難しかったら仕方ないけど、「ペーパー」は時間もリソースも使えるんやから、工夫の仕方はあるやろう、という考え方ですね。

「自分の力でやりなさい」と躾られて育ったせいなのか、ただ友達がいないだけなのかは、分かりませんが、日本人は、ペーパーを提出するのにも、自分の力だけで完成させ、その結果成績が悪く、それがために悩んでいたりする人が割といるのに対し、他の国の連中は、適当にアメリカ人の友達に相談しながら、実は、相談した相手よりいい成績を取っていたり
します。プロフェッショナルの世界は、いかに成績を残すか、というのが重要な訳ですから、そういう工夫を、普段からすべきやと思うんですよね。

アメリカ人は、宿題をするときに、スタディ・グループを作って連名で提出します(日本の大学も共同プロジェクトの機会を、特に文系で、もっと増やせばいいと思うのですが)。このスタディ・グループを組む時に、結構優秀な人と意識的に組むようにしているのが明らかに見えます。ま、生活の知恵でしょうけど。

私は、傾向的には、可愛らしい子と組むようにしています。ま、生活の知恵でしょうけど(?)。

次のを読むつるつるトップに戻る