バリバリのニューヨーカーはスーパーで試す
「ニューヨークに来てどれくらいですか?」と聞かれて、「もうすぐ2年です」と答えると「ほな、もう、バリバリのニューヨーカーですなぁ」なんて言われることがあります。
ニューヨーク(市)在住の半数以上が外国生まれであることを考えると、「バリバリのニューヨーカー」が一体どんなものかを定義付けるのは難しいと思いますが、自分の目で見て理解するのには、いい場所があります。それは、スーパー。そこでは常に「ニューヨーカーの見本市」が繰り広げられています。
よく見かけるのは、商品の袋開けて、買い物しながら食べてる人です。そしてレジに空いた袋を出してお金を払う。この前、私の前に並んでいる人のやりとりを聞いて笑ってしまいました。
支払いの列が長くて、ばら売りのクッキーを並んでいる間に全て食べてしまい、
客「ええと、あと、クッキー、名前忘れたけど、それ3つ。」
レジ「どのメーカー?」
客「チョコチップがついてるやつ。・・・・・おいしかった。」
店の中はもっと不可解です。
卵のパックを開いて、1つずつ、じぃ〜っと見つめている人がいます。大体、10個入りパックの中の1つが気に入らなかったりするようで、首をひねってもとあったところに戻します。思わず「骨董品ちゃうがな」と言いそうになったことがあります。誰も「気に入らんかったら、ひとつだけ取り替えたらよろしいやん」なんてこと言いません。景色の中に完全に馴染んでる。
カートを通路の真ん中に置いていて、邪魔だからと隅の方に動かそうとすると、「それワイのや。なにすんねん」と怒られたことがあります。そうかと思ったら、ヘルメットかぶってローラーブレードで無表情に水平移動している人とも出会います。
レジも面白い。
支払いを複雑な方法で頼む人がいます。「10ドルは現金で、残りはカード払い」とか。どういう金銭管理をしているのか聞いてみたいものですが、未だ度胸がつきません。
数を間違えて返品する人もいます。「エッ、21個のはずやのに、22個になってる?そんなん困るわ。1つ返す」 とか。
どこがちゃうねん、と思っても、ここで口にしてはいけません。関わるとややこしくなる。こういうのを目撃した時は、レジの人と目を合わせて、ちょっと目を開き、肩を上げて、「おやまあ」のポーズをします。レジの人と心が通じたと感じることでしょう。
レジの人と心が通うというのは、ニューヨークでは結構貴重な経験なんです。いつも隣のレジや他の店員とおしゃべりをしているレジのお姉ちゃん(大抵ヒスパニック系)の心を掴むのは至難の技ですから。私はこれまで、何度もトライしましたが、笑わせるのもなかなか難しい。
この人たちは、上に述べたようなニューヨークのケッタイな人々を日々見ているので、ものすごく鍛えられています。そういう意味では、この、レジにいるごく短時間の間に、その相手の心を掴むことができるようになれば、それこそ「バリバリのニューヨーカー」と言えるのかもしれません。
(05/13/2000@NY)
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カードをなんとかして!
日本で生活していると、財布が膨らんで困ります。お札が入ってくるのではありません。カードが増えるんです。
現金を持ち歩くのが嫌いな私は、クレジットカードを持ち歩いています。これが3枚。これにキャッシュカードが3枚。あと航空会社のマイレシッジカード、運転免許、ビックカメラ、ヨドバシカメラ会員証、ソーシャルセキュリティカード(うん、これは家に置いておいてもよい)、テレフォンカード、JRオレンジカード、定期券。各種割引券。そして現金は・・・ほとんど入ってない。
財布が重くて悩んでいる人、きっと多いと思うんです。この状況を解決する会社ができたら、日本社会を救うと思うのですけど。
それぞれが分厚くて、立派なカードで、一枚ずつ全てが自己主張して困るんです。たとえば、ヨドバシカメラとビックカメラ、同じカードでもよろしいやん。データベース共有して。JALとANAのマイレッジカードがなぜ一枚にならないのでしょう。カウントだけ各社別にすればいいのに。
いや、すべてをそうする必要はないのです。プライバシーを大事にしたい人も多いし。しかし、私は、自分の消費嗜好データが、各社で共有されても特に困りません。それより、持ち運びカード枚数を減らしたい。
ちなみに、コロンビア大学の学生証は、シティバンクのキャッシュカードを兼ねています。なので学生証でピッとやれば、お金が出てくる。普通のカード2枚の機能。こういうのがいい。
特に東京は他の都市に比べてマーケティング競争が盛んで、カードが無限に増えていくシステムにありますから、せめて、「マネーカード」(クレジット&キャッシュカード)、「ポイントカード」(購買によるポイント蓄積型カード)、「会員カード」(総合会員証)の3タイプを作って、段階的にでも、財布の軽量化を考えてくれたら、と思うのです。
もちろん実際にやるのは、難しいでしょうが、これ、実現したらごっついビジネスになると思うんですよね。サラリーマン金太郎やったら、やってくれるかなぁ、なんて。
(07/11/00@Tokyo)
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通勤と馬
私の夢は、馬で通勤することです。
この夢、しばらく忘れていたのですが、先日、駅の階段をのぼってたら、ドアが閉まりかけている電車に乗り込もうと、上から馬みたいな勢いで降りてきた人がいて、それ見て、思い出しました。
人間、急いでいる時は、自分が人間なのやら馬なのやら、分からないのかも知れません。目を見開いて、まばたきせずに、口を開いて走ってる顔は、ほとんど馬でした。
さて、考えてみるに、馬で通勤することは、若干周囲の理解を要しますが、実はそれほど不可能なことではないのではないか、と思います。
私の自宅は、会社からせいぜい5キロ程度です。往復で10キロ。一日に千里を駈ける馬、なんてのがいるくらいですから、距離的には全く問題ありません。会社でつなぎ止めておくところも、外にバイク置き場があるし、夏の間は暑さでバテるので、守衛さんにお願いして地下駐車場という手も考えられます。勤務二ヶ月目にして、朝、玄関を掃除しているおじさんに顔を覚えてもらえるようにもなりましたし。もうちょっとで馬も頼める。
ロンドン勤務時代の上司は、私が「家にラテンパーカッションが置いてあるけど、家でたたくと周囲の家に響くので、叩けない」と言ったら、「そしたら持って来たら?」なんて言い、でっかいコンガやボンゴを2年間ほどオフィスに置いて、朝、職場で叩くのを許してくれました。だから、いろんな人に相談してみる価値はあると思うのです。(?)
しかし、また、なんで馬か。
馬にはロマンがあるじゃないですか。そしてかっこいい。暴れん坊将軍も馬に乗って駆け巡っています。王子さまも白馬に乗ってやって来る。満員電車で駆け回っても絵にならない。
スーツで乗ると、毛だらけになる可能性がありますが、渋滞道路を気にせず、パカパカ行く姿は、きっとウエットスーツの下にタキシードを着る007と同じくらいお洒落ではないかと真面目に思うのです。
そんな私の夢を思い出させてくれた、あの馬みたいなサラリーマン風のおじさん。どうもありがとう。
(08/28/2000@Tokyo)
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この世の春から奈落の底
人は、期せずして、最高にハッピーな気分になったり、どうしようもなく落ち込んだりするものです。
6月、ニューヨークから帰国して、仕事を始める前にコンタクトレンズを新調(?)しました。前のは、ロンドン勤務の前にあつらえたものなので、かれこれ5年使っていました。今から考えると、ちょっと寿命を過ぎていました。
その使い慣れたコンタクト、朝きれいに洗って両目に装着した直後から、見える部分とぼやける部分があるのです。夜になったらもうほとんど見えない。魚を買う時に、鱗(うろこ)と眼を見てきれいなものを選ぶ、という根拠はコレかもしれません。
で、新しいアパート、新しい仕事、新しい生活の始まりだからと思い、コンタクト屋で、新しいコンタクトを作ったのです。メニコンZ。酸素透過率の一番よいハードコンタクトです。
するとどうでしょう。店を一歩出た瞬間から、見える世界が全く違うのです。空が青い。看板は鮮やかで、お姉ちゃんは素敵に見える。見るもの全てが感動を呼び起こすのです。
オー!マンマ・ミーヤ、ブリリアント・グリーン!
思わずこう叫ばずにはいられませんでした。
以来、コンタクトを着けていて視界が曇ったり、見えづらくなることはほとんどなくなりました。2〜3万円で世界が変わります。皆さん、ぜひお試しください。
※話はまだ続きます。
先週土曜日、ジャーナリストの菅谷明子さんと楽しく飲んで、帰ろうとしたら、定期券がないことに気が付きました。いや、そうは言っても、まぁ、ポケットの中身を全部出したら出てくるやろう。そう思って家に帰りました。で、家で全部調べて、ないことが分かった。
うわちゃ〜。がっク〜ん。6ヶ月5万円相当の定期がなくなった!!勤め始めてまだ2ヶ月ですから、4ヶ月分が残っている。酔いは一気に冷め、眠りかけていた頭のコンピュータがカタカタカタと音を立てて急激に回り始めたのです。
JR渋谷駅で降りた。銀座線に乗り換えた。隅田川花火の日でモミクチャになった。表参道で降りた。青山ブックセンターに行った。トイレでハンカチ出すのにポケットさわった。表参道飲み屋1件目、財布出した。表参道飲み屋2件目、財布出した。店を出て、原宿まで歩いた。原宿の券売機で気がついた。可能性は、あそことあそことあそこ。可能性が高いのは一軒目の店。深夜1時、電話する。しかし閉店後で誰も出ない。
どうしようもなく落ち込みつつも、対策を考えました。
月曜に会社の人事に連絡したら、再発行の手続きできるのかなぁ〜とか、「落とすのが悪い」と言われたら、どう言い返そうかとか。しまいには、「大体、6ヶ月定期渡す、てどういうことや。小刻みに渡すほうが危機管理の観点では重要、一体、どれだけの人間が6ヶ月も落とさずに管理できるのか(いや、できまい)」、などと考えるようになるのです。しかし、最悪の場合、自腹を切らないといけない。苦しいなぁ〜、困ったなぁ、と悩みまくるのです。
翌日昼、一軒目の店、青山ブックセンター、そこの管理事務所などなど思い当たるところに電話をしてみましたがダメでした。それでも諦めがつかず、実際に回って聞いてみようと、JR渋谷駅から順番に訪ね歩いたのです。
渋谷駅にはなかった。しかし、これはいい機会、と思って、なんとなく世間話をしてみたのです。
聞くと、定期の落し物は、一日に25件くらいあるとのこと。毎日ですよ。その他、「ブツ、が多いんです」(「ブツ」て、あなた、「他のもの」くらいの言い方でいいのと違うのん?)と言う。毎日いろんな物が50くらい集まってくる。また、数年前まで拾得物のトップはカサだったらしいのですが、最近は、カサより携帯電話が多いと言います。
「私なんて長らく携帯使ってますけど、落としたことないから、なんでこんなもの落とすのか、理解できないですねー」なんてことをその駅員さんは、言うのです。そりゃあ経験するまでは、そんな気持ち、誰も理解できまい。そういうのは落としてからでも自問自答するもの。
結局、2件目で飲んだ店で、出てきました。その時の安堵感と言ったらあなた。定期券をきちんと管理できてる時なんかには味わえないほど素敵な気分になりますよ。どうぞ皆さん、試してください。
6ヶ月定期は、魔法の定期。
6ヶ月定期が配布される理由はここにあります。(?)
(08/28/2000@Tokyo)
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